佐々木漣 ブログ 漣の残響

闇の中に詩を投げろ

空想癖の終焉で

生きていくことに妥協を覚えた心臓は時々、
握りつぶされたような眠りに、落ちる
最初は一秒、次は二秒
影は助走のように長くなる
どこまで跳ぶのか、行くのか
自死の発作が自らの中で目覚め、
息ができないと叫ぶ

歩んだ足跡たちはどこへ消えたのだろう
未来は救済でない、といつ知ったろう
正しさだけでは生きてこれなかった
読み書きができない私は、国益のため
何度でも捨てられていく
そして何かを拾うように、空巣を繰り返した
憧れという疎ましさを頭の中で、何度も殺した
つり橋で踏み外した失敗は、
頑なまでに人生の失敗となる

今、床を磨くことを仕事にしている
品川のビルで夜九時から、朝の五時まで
あなたの革靴の裏側が、反射するほどの拘りを持って
仕事に良いも悪いもないはずなのに、
誰かがカースト制度を導入する
「こんな自分は……」と
一人描いた空想に
埋没していく人の足を私は見てきた
音が少し擦れて聞こえる
知らない擬態語がざらついて聞こえる
辞表の代わりに、遺書を書いた
それでも一日を勤め上げる
黒いと言われている職場で、
汚れない方がおかしい

「またどこかに忍び込みたい」
睡眠導入剤
空想癖の終焉で弄びながら
握りつぶされたような孤立に全裸で浸かる
湯が凍っていく。罰なのだろう

ふっと、飛び出した真昼の国道で 
男は祈る間もなく、人をやめた
美辞麗句も箴言も、本物の絶望は救えない
脳がぐったりとその呼吸をやめる
安らかに音もなく