佐々木漣 ブログ 漣の残響

闇の中に詩を投げろ

鯨の詩

虚しさで腹を膨らませて、貪るのは夢の死骸
君がもがき苦しんで書いたその言葉は、海に沈んで、
僕には届かなかった
生きる理由をさがしていた君は、
結局それを見付けることができたのか?
メタファーを地図にして、
海の砂漠を渡りきれたか?
点々と続く無人島に漂着し、
一時の暖をとる時に、
君は、その炎にのみ安らぎを感じるようになる
もはや冒険を必要としなくなった君
そのノスタルジーさえも忘れつつあった
宝物も、それを探しに出た人々のことも、忘れてしまった
遠い時間の彼方に
破れたマストに叙述された、
手紙とも、日記ともつかない、
長い長いメッセージ
僕には届かなかった
深い深い海の底で、
時間をかけて濾しとられ、
溶けて行った
広い広い海の中で
鯨の耳に届いたろうか?
二千五百キロ先まで届く、
彼等の詩になったろうか?