佐々木漣 ブログ 漣の残響

闇の中に詩を投げろ

極地にて

明日の朝がなければ
今日が成立する論理はその意味を失う
おわかりになりますか? 
今日という概念はただの箱である、と
透明な手が梱包し
あちこちの支店を経由して
家のドアを無益に叩く
凍りついた私に届けられる警鐘の愛

それは心臓という名で
一日に七〇〇〇リットルの更新を
血まみれで続けている
数えなくとも、私を生かし続ける
自分の耳で自分の心音を聴くことはできない

明日が成立し、
今日の終わらせ方を知る
神話の世界のように
世界中を飛ぶ火の龍
洗礼を受け目覚めた
私の裏側に隠れていた破壊の波
今生の別れのように、
くるぶしをひいていく沸騰した波

それでも
顔をあげれば
瞳孔が働く
耳が起きる
唇が求める
一杯のスタウトをください
一日のための、黒曜石のような煌めきを

《跪き、心臓は鼓動を続けることにして、
私は整理した自殺するための部屋を
もう一度、生活で汚すことにする
棄教のための遺書を食べ、便にして流した》

凍っていく
水平線に凍っていく
巨大な望遠鏡のような聴診器で
今年最後の光の鼓動に、私は耳を澄ます
白夜が終わる
長い極地の、
夜の到来
不眠症の始まり