佐々木漣 ブログ 漣の残響

闇の中に詩を投げろ

何枚でも刷れるコピー機で印刷した傷

きっちりと採寸し
自分だけの服を一着、
つくろうと思う
それは毎夜遅くまで働く私であり
間男のいる妻に怒ることもできない、
やけ酒をする私であり
大切にしてきた切ない思い出のつまった
私の肉体
心の肉体

通勤するたくさんの悲哀
罅だらけの現代史は、
彼らの習慣によってかろうじて保たれている
他人になるため仮面をつけ、
萎びた挨拶を交わす
徹夜をしたエンジニアが
ソファーで烏賊になっている
あぶられているのは人間も同様で
二日、三日と経過すれば、食べる頃合いだ
私も、喰われた一人だ

充血した瞳をしぼり
第三関節まで
喉に指を突っ込んで吐くことが、
ここでは出世への近道で、
罵倒された傷はいつも輝いており、
キーボードを打つ音は見事な短調であり、
私のすべて
上書きされた丘の上の魚は、
混沌でしか息ができない
鏡の中の、くたびれた自尊心が、
酸欠のため、痙攣している

何枚でも刷れるコピー機で印刷した傷
塩をぬっても痛みはしないが
光でボロボロと鱗のように
皮膚がはがれる

もう、未来を殺して
苦しい過去に拘ることと決別したい
始発電車の諦めの後にやってきた
名もなき朝の夢