佐々木漣 ブログ 漣の残響

闇の中に詩を投げろ

ラヴ

どうか笑い続けて

どうか息をし続けて

君と家に帰るために

中古で買った、よく走る黄色いビートル

 

今があるという繰り返しは絶対ではなく

時代はいつだってゴーストかもしれなく

けれど、この古いレコードで

Let it beで

逝く前に振り返って

失うものを失わないように

ときどき、記憶を抱きしめるから

ときどき、幻覚として抱きしめるから

 

あの日光の下で、そよ風を知り

父親にしてくれた腕の中の体温を、知った

それが二人の仕事だった

語彙の量など必要としない

ただ、わかること

何ひとつ遠慮はいらない

僕は強くつかむ

直喩でも隠喩でもないぬくもりを

ポケットに入っている記録の確かさに託して

花にして、種にした

 

飛ばされていく綿毛

風、風、風

聴こえてくる歌

振り返らずとも僕を前におしやろうとする

現実を現実で切り開いて

真っ白いかまいたちで切断された

正確ではなくなった花時計の秒針の山

刻まれなくなった時間の錆

 

何処にいるのか、もうわからない僕に

降り注ぐ雨に似た涙の結晶

それを、どのようなことをしてでも

「意味」として守り抜こうと

4B病棟のトイレの鏡に誓った

何処でもない僕の自意識の中心で

守り抜こうと誓った

日蝕のように、やがて悲しみを忘れ、

君に出した返信が宛名不明で戻ろうとも