楽園
満天の星空さえ煙る蒸し暑い夜に、彼は
表現できることがらについて
考えを巡らしている
匣の中に手を突っ込めば
彼方にいる誰かの滑りある手が握り返してくる
冷たい心は誰もがその胸にきちんと所有しており
民族問題を国境線で問いただす時
どれだけ相応しい立場をとろうとも
自らの増悪を浮かび上がらせることにしかならない
下卑た自由の斧を振りかざし、弱き意志を挫く
結局の所
起きる略奪は悲しみまで焼き払い
陣痛促進剤を打たれて
何も感じられない子供を次々に産む
「足りない、足りない、暴力が足りない」と
はっきりとした産声を上げながら
乳房を吸い潰す
爆撃と言う手段で浄化はできない
かつてふたつのキノコ雲を受胎し
未だ拭えない帝王切開の傷口がそここにある
歴史にさえならない事実は隠蔽工作されたまま
傴のように腰を曲げてどうにか耐えている
熱い湯を湛えている川だった憐れみが
今日も人々の阿鼻叫喚から、ぐつぐつと奪骨をしている
本当の風景の中には
被爆した雪が降り積もり
全てのインスピレーションの根源を融解させる
毒のない蛇は猛毒に目覚め
僥倖さえも拒みかどわかす
東にはもう何もない、誰もいない
西にはただ巨大な智慧という雷が控えるだけ
それを楽園と言うのなら
残された未来は、破壊という名を持って改竄されていく
荒野を彷徨い揺蕩う夢に過ぎない
そして彼は、すべての妄言を路上に書き始める
潤沢と枯渇とが摩擦して起こした弾劾裁判の記録を
無垢の歌が世界を飛び交っている
思想と呼べるものがあるのなら、立派に謀殺されるだろう
溢れ出す衆説を抱えて物乞いの時代が直ぐに来る
托卵のように人へ植え付けられた空腹の発露
誰であれ、決着を付けずにここを去ることはできない
近くで、カッコーが鳴いている
(カッコー、カッコー、カッコー)