佐々木漣 ブログ 漣の残響

闇の中に詩を投げろ

2019-01-01から1年間の記事一覧

ラヴ

どうか笑い続けて どうか息をし続けて 君と家に帰るために 中古で買った、よく走る黄色いビートル 今があるという繰り返しは絶対ではなく 時代はいつだってゴーストかもしれなく けれど、この古いレコードで Let it beで 逝く前に振り返って 失うものを失わ…

目が沸騰している

外では、激しく憂鬱が降っている声を伴わない孤立をはらんで、窓辺をたたく壁紙は剥げ、黒い黴の臭いに満たされた部屋自分が自分とぶつぶつ話しているそうしていないと盗まれるのだ思考も、思想も、地獄でさえも彼はいよいよ四十歳をむかえてしまいもはや自…

天秤

母国語のような命綱が、切れそうな時死ぬほど苦しい、白黒の言葉を吐き出せちらつくテレビジョンを見る苦しい生活その白黒の言葉を吐き出せ手遅れを、手遅れにしないための方法論は、人の溜息を食すケモノに飲み込まれ、消えたサスペンスはない、人生のサス…

何枚でも刷れるコピー機で印刷した傷

きっちりと採寸し自分だけの服を一着、つくろうと思うそれは毎夜遅くまで働く私であり間男のいる妻に怒ることもできない、やけ酒をする私であり大切にしてきた切ない思い出のつまった私の肉体心の肉体 通勤するたくさんの悲哀罅だらけの現代史は、彼らの習慣…

佇立する人

老いて忘れられていく、埋没という居場所狭くなっていく自分の行動縄張りは夏でも冬でも炬燵の中で床ずれができてしまうほど大量のワンカップで自らを失った 痛みはない乱れてもいない何度ナイフで樽を刺しても感受性は既に死んでおり黒ひげが飛び立つはずも…

埋葬式

形あるものはいかなる理力によって燃えるのか熱は時に心を温め、何故、憎悪に変化するのかささやかな芸術として刻まれたあなたの命は、呼ばれることなく灰燼に帰す 身体に残る障害こころに残る障害あなたは何分同情し、何分で忘れたろう?記憶も記録も劣化し…

大人たちよ

大人たちよ、子どもを外に出せ泥まみれにして手足に擦過傷をつけよう君が大人になっても虫とり網を捨てないでくださいあちこち縫い合わせた八月の風景を忘れないで欲しい棚田を駆け下り、里芋の葉を傘にし、夕立に降られ、どんな悔恨も葬られた、一面の自然…

開錠/施錠

言いたかった泣きながら言ってやりたかった何も言うことがないのに、震えながら沈黙を罵倒したかった大切な人がより一層大切になる時、私たちは初めて心から祈りを知った大切なものが、どれほど大切であるかを 噂がコンマ何秒で世界をつくり変えていく矛盾を…

極地にて

明日の朝がなければ今日が成立する論理はその意味を失うおわかりになりますか? 今日という概念はただの箱である、と透明な手が梱包しあちこちの支店を経由して家のドアを無益に叩く凍りついた私に届けられる警鐘の愛 それは心臓という名で一日に七〇〇〇リ…