佐々木漣 ブログ 漣の残響

闇の中に詩を投げろ

開錠/施錠

言いたかった
泣きながら言ってやりたかった
何も言うことがないのに、
震えながら沈黙を罵倒したかった
大切な人がより一層大切になる時、
私たちは初めて心から祈りを知った
大切なものが、どれほど大切であるかを

噂がコンマ何秒で世界をつくり変えていく
矛盾を支えている何者かが
人の愛憎のドアの鍵を簡単に開ける
凍っていて開かない秘密の扉を
懐から、燃え上がる盗人の鍵を取り出し
因果応報のもと、開錠する
灼熱としてこの世へ

炎の痛みは、開かれた
肉体は、いつだって拒絶できない
人が創り出した神に、姦通された
破壊は善であると教えられた
鳥が飛ぶほど、善とされた
「自由」というシュプレヒコール
行進する人々よ
その先に何があるのか、教えてくれ
君は今、何処に立っている?
歴史の中心か、あるいはその端か

《さざなみに
一言も言葉を捨ててはならない
一語も捨ててはならない
落としてしまったあの叫び声
九十九里の砂浜で
誰かが拾い、胸に収める》

あまりに苦痛を噛み締めていると、
時代の奥歯が壊れてしまうことがある
そんな風に捧げるのか、私やあなたは

人の住めないこの国を
盗人が命がけで施錠しようとしている
倫理の扉を、名もなき自由で凍らせて