子供の頃、星空を見上げて自分だけの星を見つけたり、星と星とを結んで勝手に線を引いたりした人は僕だけではないだろう。そしていつの間にか大人になり、そんな遊びを忘れ、生活に、日常に埋没していく。過ぎ去った過去、これからやって来る未来がどんなものか深く考えないまま、「自分を追い越すことも/自分に出会うこともない一本道」で右往左往している自己を、この詩集を読みながら改めて実感した。
「飾りや窓をすべて捨てて/星明りの舟にならべたら/眩いあなたに辿り着けるのだろうか」と「水の島へ(航路)」で語られるあなたとは誰の中にでもいる「私やあなた」である。そしてその明かりは太陽でも月でも、シリウスでもなく、りゅうこつ座のカノープスなのだろう。詩人・桑田窓はそんな光の輝き・眩さをやさしい言葉で一篇一篇、丁寧に紡ぎ発光させている。
どのような人生にも生と死はつきもので、我々は生身もままでしか生きることが出来ない。「あたりが暗くなれば/悲しい知らせが たくさん降ってくる」。それは避けがたい人生の滋味とも表現出来るかも知れない。表題作「カノープス」には、静かだが力強くこう記されている。「「私はいつも助けられてばかり」と嘆く人も/「誰かを守っている」と思い込む人も/みんな同じ/自分の舟を漕ぎ/この世界を生きている//もう使われないと 丸めた羽衣を/空に掲げ 大切に眺めていた頃も/何も持っていない 今も/私は 私を全うするんだ」。
その時、確かに「人生よ、汝は美しい!」。そう、私たちは叫びさえするのだろう。