佐々木漣 ブログ 漣の残響

闇の中に詩を投げろ

表決

「罪には罰を」と書き記した白票を投じ

鬱屈した温室で育った記憶のばらばらが

列車内で自らを噴霧した

自分の将来の右胸を貫く

ジョーカー気取りの地を這う毒虫

握り潰された無名と知られたくなくて握った

刃渡り三十センチの柄を失った血みどろの鉾

陪審員の悲鳴がその頭蓋で共鳴したものの

望みは一滴も降り注がなかった

お前の恐怖も

勝手な強行も

この世界では君臨できない

嘆きにもなれなかった天蓋は漆黒に堅いまま

 

TVは与党の優勢を伝える選挙速報に

なみなみとその財力を結合させ

お前は鼻垂れた細長く青白いテロップと同列

模倣は検索によって高度化されていくが

その恐怖体験は水のように薄まっていく

昨日、私たちは危機からの逃げ水で

今日、お前は道路に撒かれた

打ち水に過ぎなかった

責任転嫁の呪縛を足枷にしようとも

高速で走る車に弾かれる屍となるだけ

父なる、

母なる、

者であったはずの重圧で。

メディアは誤字と誤報を買春することで

悦楽共犯者に証明書を与えていく

正しさとは何か、宗教は答えない

門が崩れたのだから

誰かがいま一度、歯向かうのだろうか?

その命を宿命にして

泥棒に売り渡した代価で

小さき灯火を勇気と呼び直すべき時に

 

暴力に対し逃げろと教わったことはない

しかし脳は逃げることを

自らを律する法案を通し続ける草案を

書き続ける

 

誰も開けてくれないドアがある

無暗に「希望」だけが語られていく

下を向いた子どもには未来を紡げないらしい

表決が下るが

傘がない時代

男にも、

女にも、

ずぶ濡れに慣れていける環境が整えられる

 

それでも愛する者の頬に傷をつけないため

十五分間、誰だって英雄になれ得る

ポケットに押し込んだ瞼を開きさえすれば

技術に乗っ取られた命題が革命を起こせば

誰もが明日を見通せないのだからこそ

拳を暗闇に撃ち付ける者が賭する

生きる意味が復活しないこと、を

存在が透明になりながら、昇華され得る

 

ジョーカーは二枚しか存在しない

それ以上のルールは存在しない

トランプゲームなど

廃墟に捨て

凍えはじめた夕陽に臨みながら

落ち葉をかき集めて、親しい者と

本当の火と煙の使い方を学ぼう

甘い芋を頬張り思い出すのだ

誰の心にも置いておける

古い手紙のように長い夜の時間を

一日の終わりの供養として