佐々木漣 ブログ 漣の残響

闇の中に詩を投げろ

ラヴ

どうか笑い続けて どうか息をし続けて 君と家に帰るために 中古で買った、よく走る黄色いビートル 今があるという繰り返しは絶対ではなく 時代はいつだってゴーストかもしれなく けれど、この古いレコードで Let it beで 逝く前に振り返って 失うものを失わ…

目が沸騰している

外では、激しく憂鬱が降っている声を伴わない孤立をはらんで、窓辺をたたく壁紙は剥げ、黒い黴の臭いに満たされた部屋自分が自分とぶつぶつ話しているそうしていないと盗まれるのだ思考も、思想も、地獄でさえも彼はいよいよ四十歳をむかえてしまいもはや自…

天秤

母国語のような命綱が、切れそうな時死ぬほど苦しい、白黒の言葉を吐き出せちらつくテレビジョンを見る苦しい生活その白黒の言葉を吐き出せ手遅れを、手遅れにしないための方法論は、人の溜息を食すケモノに飲み込まれ、消えたサスペンスはない、人生のサス…

佇立する人

老いて忘れられていく、埋没という居場所狭くなっていく自分の行動縄張りは夏でも冬でも炬燵の中で床ずれができてしまうほど大量のワンカップで自らを失った 痛みはない乱れてもいない何度ナイフで樽を刺しても感受性は既に死んでおり黒ひげが飛び立つはずも…

開錠/施錠

言いたかった泣きながら言ってやりたかった何も言うことがないのに、震えながら沈黙を罵倒したかった大切な人がより一層大切になる時、私たちは初めて心から祈りを知った大切なものが、どれほど大切であるかを 噂がコンマ何秒で世界をつくり変えていく矛盾を…

極地にて

明日の朝がなければ今日が成立する論理はその意味を失うおわかりになりますか? 今日という概念はただの箱である、と透明な手が梱包しあちこちの支店を経由して家のドアを無益に叩く凍りついた私に届けられる警鐘の愛 それは心臓という名で一日に七〇〇〇リ…

新しい思想(加筆修正)

国民の義務だと謳って他人の紅い汗を舐めながら、働くことばかり強制され眠くなれば、二階から轡を点眼される前回休んだのは、いつ転生した時だろう?どの時代も一緒だったふたつ、みっつと死んだ数だけ影が増える 《スキャンダルに追われ、自分の放った矢に…

飛ばなかったイカロスに価値はあるか?

時間をかけ、にがい記憶を自分で沈黙させたのに、ふとした瞬間、ぱっくりとその縫い目は裂け、鮮血が再び弾ける焦がしてしまった自意識をおもわず飲み込んで一人、生き急ぐように演じてきた舞台の上で強迫的な幕がやっと下りる 擦過傷でも大なり小なりトラウ…

新しい思想

国民の義務だと謳って他人の紅い汗を舐めながら、働くことばかり強制され眠くなれば、二階から轡を点眼される前回休んだのは、いつ転生した時だろう?どの時代も一緒だったふたつ、みっつと死んだ数だけ影が増える 《スキャンダルに追われ、自分の放った矢に…

『嘘の天ぷら』佐々木貴子 詩集 感想

飼育 「僕は鬼を飼っていた」冒頭から、負の自分と対峙していく詩人の覚悟がある。「鬼」は三角みづ紀さんの「オウバアキル」にもあるが、佐々木貴子の鬼はもっと感情豊かだ。それは「鬼の成長が僕の唯一の楽しみだ」にも見られる。 詩の後半の畳みかけるよ…

パンデミック

中庸が失われていくという自覚はあるか? 原罪の開花に負けていく、まっさらな鳥が鳴く 警鐘は快楽を前に斬首され、帰らぬ人となった もはや、透明性のない神の手では 安眠できる場所を検索することはできない 聖櫃が埋まっているという、使い切った荒地を彷…

挿入歌

私は歳だけをとり、 眠れない自分の中へ 少年を幽閉した 月明りだけで伸びる身長 何の満足にもならない、 マスターベーションのくり返し 白昼夢の中に入って、逝ったお前の死は あまりにも響いた 走ることしかできなくなった鳥 心の傷というものは、 やすや…

鯨の詩

虚しさで腹を膨らませて、貪るのは夢の死骸君がもがき苦しんで書いたその言葉は、海に沈んで、僕には届かなかった生きる理由をさがしていた君は、結局それを見付けることができたのか?メタファーを地図にして、海の砂漠を渡りきれたか?点々と続く無人島に…

シャッター街

かすかに瞬いているアーケードの光 鈍色の月が示す 追憶とはわずかな破壊であり 安穏とは常に不安に挟まれてきた 死にそこない 誰も使わない公衆トイレの便器に頭を入れて 溺れ死んだ、クリーニング屋の店主 私はその財布を盗んだ タマゴをひとつ買い求める…

気づかれないように、死なないように、幸福であるように

夜の横断歩道を駆けて渡る 声を出す間もなく視界から消えた猫の様な手 ありふれたアスファルトが、トリミングされ 大手を振ってやってくる一人分の空白 右折する車に巻き込まれないよう エアバッグを備えるべきは、 歩行者の方なのかもしれない 罵るのはいつ…

もしも死にたくなってしまったら

もしも死にたくなってしまったら、僕を起こしにおいで。深い夜や、盲のような霧の時、サイレント映画について長いお話をしよう。暖炉のある部屋で、掌で影を作って再現しよう。短編小説家の、ひと時の寸劇。誰も死なず、誰も損なわれない物語を、毛布のよう…

お父さん

立ち飲み屋でお父さんは死んだんだ お母さんが「お父さん、お父さん」と叫んで 僕と妹も「お父さん、お父さん」と叫んだ 僕たちはお父さんの足を引っ張って家まで連れて行き、 合掌してから、その身体をすべて平らげた 「これが供養なんだよ」とお母さんは鼻…

あなたの耳に届きますように

これは自殺ではありませんただの出来事廃棄物を処理しただけそれを燃やして、海にまいてください私は地球の羊水に還っていくだけですもう、余計な心配はいらないしもう、余計な病名は必要ない望まれて生まれ、望まれて死んでいく矛盾が、楽しげに踊りながら…

空想癖の終焉で

生きていくことに妥協を覚えた心臓は時々、握りつぶされたような眠りに、落ちる最初は一秒、次は二秒影は助走のように長くなるどこまで跳ぶのか、行くのか自死の発作が自らの中で目覚め、息ができないと叫ぶ 歩んだ足跡たちはどこへ消えたのだろう未来は救済…

逆光

八月の凍てつく光が今日も人を酷暑にする人間の温暖化は着実に進んでおり、いつ発火してもおかしくない状況で、侮辱ほど簡単な起爆装置はない 自ら地雷を踏んだジャーナリストが身を賭して叫んでいる子どもたちに民の種を託せるのか立ち尽くす以外に、道はな…

第一回よるもく舎■合評企画 佐々木漣『漂泊の虎』

〇よるもく相互合評会とは?? 詩舎夜の目撃者(通称よるもく舎)で、詩を相互に発表しあう場を作ろうというもの。毎回作品を相互に批評、感想を出して発表しちゃおうと勝手に考えた、「魚野真美 詩舎 夜の目撃者」における企画です。今回は私の作品『漂泊の…