佐々木漣 ブログ 漣の残響

闇の中に詩を投げろ

逆光

八月の凍てつく光が
今日も人を酷暑にする
人間の温暖化は着実に進んでおり、
いつ発火してもおかしくない状況で、
侮辱ほど簡単な起爆装置はない

自ら地雷を踏んだジャーナリストが
身を賭して叫んでいる
子どもたちに民の種を託せるのか
立ち尽くす以外に、道はないのか

人間の凋落
それはもう始まっていて
鎖を外された者は早速、
金色のピスをする
その姿、犬そのものだ
倫理の潔白は蒸発し続け、
上空へ立ち昇っていく
大量の漂白剤が、
季節はずれの雪となって
有色人種に降る

人々は疑心暗鬼に疲れ果てた
怒号が地鳴りになって、大きな家が揺れている

斬首された寛容さが足元にころんと転がり
スプリンクラーのように
鮮血を噴射する
三歩、歩いたという
骸こそが生き、
ねっとりと発情していて
真夜中に翻る国旗がいよいよ艶かしい

戦前にとって戦後は通過儀礼で、
濁った精液が火のように強く射精され、
燃える痛みが
悪意を持って幸甚を妊娠させた
だが、孕んだ子は一向に出てくる気配がない
耳を澄まさずとも聞こえるヘイトスピーチ
子宮の中でテロリズムを実行している

破けた空から降ってくる「第九」歓喜
生命は逆行しない、逆光するだけだ
人間にとって、最善とは思われない姿で
八月の凍てつく光は、
今日も代わり映えしない